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The Host ザ・ホスト/美しき侵略者

アメリカ映画 (2013)

チャンドラー・カンタベリーが重要な脇役を演じるSF映画。分野としては、エイリアンによる侵略ものだが、今までの類似の映画と全く違うのは、エイリアンが暴力的な化け物ではなく美しく輝く寄生体であること。その寄生体は、これまで11の惑星を「征服」してきたが、何れも、在来の知的生物と共存する形で平和裏に暮らしてきた。しかし、地球の場合は状況が異なり、侵入された人間の個性は強く抑圧され、共存ではなく侵略となってしまっていた。そして、僅かに残る「寄生されていない人間」を狩るためのシーカーが、武器を持って捜索する。映画は、そんな逆境の中で生き延びてきたメラニーとジェイミーの姉弟に焦点を当てる。シーカーに捕まり、「魂」を埋め込まれたメラニーはワンダラーとなるが、強力なメラニーの個性はワンダラーをだんだんと変えていく。映画の目的は、寄生体と人間の争いを描くことではなく、ワンダラーがどう変わり、人間への愛に目覚めて行くかを描くことにある。暴力的なシーンもわずかに存在するが、観終わった後に残るのは、ワンダラーの優しさがもたらす癒しの心。変わった趣向のSF映画だ。

メラニーとジェイミーの姉弟は侵略から逃れている間にシーカーに見つかってしまう。姉は敵をひきつけるため、死を覚悟で窓から飛び降りるが、メラニーは死ななかった。そして、寄生体を埋め込まれ、ワンダラーという名でシーカーに協力することになる。しかし、強い精神力を持つメラニーは、ワンダラーの心の中で、堂々と意見を言い、ワンダラーも次第にその意見に耳を傾けるようになる〔冷酷なシーカーに対して、反抗心も芽生える〕。ある日、見切りをつけたワンダラーはシーカーの拠点を脱出し、(メラニーが)前に見たことのある叔父の隠れ家に向かう。ワンダラーは、最初は隠れ家にいた人々から猛反発を食うが、それを助けたのは叔父と弟のジェイミーだった。叔父は、ワンダラーをワンダと呼ぶことにし、そのワンダに最初に懐いたのは弟で、ワンダは、体の中にメラニーが生きていると打ち明ける。叔父は、砂漠の中の死火山の火口の洞窟で麦の栽培に成功していたが、ジェイミーが刈り取りの際に足を切ってしまう。その傷はどんどん悪化し、ワンダはかつてメラニーの恋人だったジャレットと共に薬を取りに行く。そして、寄生体の病院からまんまと薬を持ち出し、そのお陰でジェイミーが一命を取りとめるが、それにより、全員の信頼を勝ち取る。そして、人間の体に寄生した生命体を傷付けずに外に出せば、人間は元通りになると教える。そうしたワンダには、かつてメラニーの恋人だったジャレットと、ワンダの個性そのものを好きになったイアンの2人の男性が、心を寄せるようになる。ワンダは、メラニーを元に戻したいと考えるようになり、そのためには自分は死んでもいいとまで思い詰める。ワンダから寄生体を取り出し、メラニーに戻す手術台の上で、覚悟を決めたワンダは目を閉じる…

チャンドラー・カンタベリー(Chandler Canterbury)の事実上最後の出演作。脇役だが、ストーリーのターニングポイントに何度も登場する重要な役だ。お陰で、簡単に紹介するつもりが、長くなってしまった。映画の撮影期間は2012年2月13日~4月28日なので、1998年12月15日生まれのチャンドラーは、もう13歳になっている。他の映画と比べ、声変わりはしていないが、かなり大きくなった感じがする。入手不可能の『Black Eyed Dog』は、公開が2014年9月と この映画より遅いが、予告編で見る限り幼い感じがするので、ひょっとしたら、この映画が 最後の出演作だったのかもしれない。


あらすじ

映画の冒頭の言葉は非常に印象的。「地球は平和だ。飢餓はない。暴力もない。環境は修復され、誠実・礼節・親切を全員が実践している。我々の世界は かってないほどに完璧だ」。ここまで聞いてくると、素晴らしい未来の話かと思ってしまうが、次の一言で全ては崩れ去る。「もはや 我々の世界ではなかったが」。意地が悪い。「我々は、異質な生命体に侵略された。地球上の人類のほとんどすべての体が乗っ取られた。生き残った少数の人間は、逃げ続けている」〔ここで、不満を言うと、確かにシチュエーションは面白いが、アフリカの乾燥地帯の半裸の部族少年が映るのは解せない。環境を修復する力があるのなら、世界の生活水準も同一化できるはず(同種の生命体が体を奪う以上、生活環境に極端な差があるのは変)〕。そして、本編が始まる。どこかの建物の中で、1人の「乗っ取られていない」女性(メラニー)が、シーカーと呼ばれる追跡者とその部下(全員、白服)によって追われている。メラニーは、窓を破って逃げるが、そこは5階以上の高さだった。それでも、特異な肉体を持ったメラニーは、骨や内臓に何の異常もない。シーカーは、気を失ったメラニーに即座に仲間を入れる、やり方は、うなじを僅かに切り、そこから、カプセルに大切に保管されている「エイリアン」を侵入させること。これまでの映画と違うのは、それが奇怪な形をしているではなく、光輝く美しい物質であること(1枚目の写真)。目が覚めたメラニーの瞳は、光輝いている。これが、乗っ取られた人間と、元のままの人間の大きな違い。メラニーの体に入り込んだ新しい生命体は、名前を持つように言われ、「ワンダラー(さまよう人)」と告げる。ワンダラーが、1人で鏡の前に立っていると、突然、頭の中で声がする。「私は死んでない。ここにいるわ。あんたのものじゃない。体は私のものよ」。メラニーは精神力が非常に強く、宿主に抵抗しようとする。しかし、シーカーがワンダラーに頭脳に残っている記憶を話すように命じると、「彼女の名前はメラニー・ストライダー。ルイジアナで生まれた。家族は、植民地化の第一波からは逃げたが、その後は、時間の問題でした」と話してしまう。桟橋の上に建つ家に白服の男女が近づいて行く。「父親は1人で発見され、シーカーに捕まるより自殺を選びました」。この時、メラニーと弟のジェイミーは桟橋の下に隠れていた(2枚目の写真)。この弟の名前を告げる時、メラニーは全力で抵抗する。「ダメ! 言わないで! お願い。頼むから」。しかし、頭の中で命令するだけでは効果はない。ワンダラーが 弟の名前を口にした後、「大嫌い。傷つけてやりたい」と罵ることしかできない。ワンダラーが次に述べたのが、ジャレッドと出会い恋人となり、「私たち〔エイリアン〕に知られていない 見捨てられた土地に住み着いた」こと(3枚目の写真)。メラニーの味わった恋心を再体験するうち、ワンダラーは次第に「人間的」になっていく。最後に頭の中で見たものは、捕まる直前の状況。メラニーは、安全だと思った古いホテルに入り、ジャレッドが物資の調達に出かけた時、シーカーに見つかってしまう。メラニーは、弟に、机の下に隠れるように言い、「必ず戻るから」と約束し(4枚目の写真)、囮(おとり)となって そのまま帰らぬ人となった。「これで。分かったわね。私は、何でもするのよ」。その声を聞き、ワンダラーは、それ以上 話すのをやめる。砂漠の中にある山稜〔隠れ家のある場所〕の外郭線を紙に描くが、「ダメ! 待って! 止めて!」とメラニーに言われ、ワンダラーは紙を破り捨てる〔後で、シーカーが修復する〕。そして、シーカーの冷酷さに反撥し、最後には施設を脱出し、隠れ家のある砂漠へと向かう。イントロなので長くなったが、以後は、チャンドラーの出演場面に限定して紹介する。
   

ワンダラーは、逃走中の車の事故の後、砂漠を歩いて彷徨し、倒れているところを叔父のジェブ(ジェブダイア)に発見される。一緒にいた伯母のマギーは、「騙されないよ、この寄生虫」と、殺すことしか考えないが、叔父はその反対を押し切り、目隠しをして隠れ家に連れて行く。そこは、岩山の中にぽっかりと開いた天然の空洞で、太陽の光もそこから射し込んでいる(1枚目の写真、矢印はワンダラー)。「人間がこんなに残ってる。まだ負けちゃいない」。ワンダラーはジャレッドの姿を見分けて、声をかける。しかし、ジャレッドは敵だと思い、引っ叩く。ジェブ叔父は、「やめろ、ジャレット」と止める。マギー伯母は、「ジェブダイア、辛いのは分かるけど、みんなのことを考えなさい。今まで通り、ドックに任せましょ〔=寄生体を殺す〕」と言う。それに対し、「ノー」という声が響く(2枚目の写真)。メラニーの弟のジェイミーだ。みんなが振り返って見上げる(3枚目、矢印)。ジェイミーによるターニングポイントNo.1は、叔父に賛成し、ワンダラーの命を救ったこと。叔父は隠れ家のボスで、メラニーはその姪。甥のジェイミーまで反対したことで、表立っての反対は言えなくなる。その後、ワンダラーは、ジャレッドの警備下で、穴部屋の1つに閉じ込められる〔ドアはない〕。メラニーは、「みんなは、人間が 体内に生き残れることを知らない。私がここにいるって話しちゃダメよ。みんなは信じてくれない。助かろうと嘘を付いてると思われるだけ」と注意する。そこに、3人の男がやって来て、ジャレッドを立ち退かせて、ワンダラーを殺そうとする。ジャレッドは防ごうとするが、3対1なので、ワンダラーは男(イアン)に捕まり首を絞められる。それを救ったのは叔父の発砲。「言い辛いんだが、ここはわしのウチで、君らは客だ。今のところ、彼女もそうだ。わしは、客同士でもめるのは好まん」と言う。生意気な連中が「多数決だ」と反論すると、「ここには民主主義はない。あるのは専制主義だ。厳しくはないが、専制は専制だ」と穏やかに凄む。そして、「ひとまず、このトンネルは立入禁止だ。もし、戻ってくる奴がいたら、問答無用で撃つ〔I'm asking questions second./“Shoot first” が欠けた表現〕」と宣言する。
  

ワンダラーは、岩の床に丸い光が小さく当たっているのに気付く。そこには、天井に穴が開いていて、5-6メートルほど上の空間とパイプのようにつながっている。上の穴からは、ジェイミーが心配して時々覗いている(1枚目の写真、矢印は穴)。目と目が合う。「僕が、誰か知ってる?」。「ジェイミーでしょ」。「でも、メラニー姉さんじゃない」(2枚目の写真)「僕の姉さんがどうなったか知りたいんだ。必ず戻るって言ったのに」。「あの子には、何があったか 知っておいて欲しい」。「子供じゃないんだ。教えて」。「あなたとジャレッドを守るために 自殺しようとしたの。ヒーラーが元通りにし、人間の残存者を見つけようとして、私を入れたのよ」(3枚目の写真、矢印は穴)。「名前、あるの?」。「ワンダラーよ」。「どこから来たの?」。「他の惑星」。せっかくもっと情報が得られたところだったのに、そこにジャレッドが怒鳴りながら入って来て、会話を止めさせる。
  

先ほどの会話を漏れ聞いていた叔父は、ワンダラーへの信頼度を高め、「ワンダ」と呼ぶことにする。そして、この場所が死火山〔巨大な穴は噴火口〕だと教え、地熱を利用した温泉に入れさせてくれる。その次に叔父が連れていったのは、別の噴火口の跡。そこには、一面に小麦が栽培されていた。火口頂部には全面に鏡が付けられ(1枚目の写真)、その角度を調節し、常に太陽光が麦に当たるように工夫されている。小麦畑を歩きながら、叔父は、穿った見方をする。「お前さんが言うように、もし シーカーに指図されて来たんじゃないとしたら、『なぜ彼女はこんなことをしたのか?』。そこで考えた。お前さんたちが俺たちの頭に入っても、俺たちはまだいるかもってな。囚われの身でだが。俺たちの記憶が残ってるならな。戦うことなく消えちまうとは思えんのだ。俺なら、黙っちゃいない。メルだって、闘志満々だ。あの娘は、愛する者のためなら、必死で戦うからな。もしかして、そんな愛が、誰かさんを変えたのかも。心をだ。そして、普通ならしないようなことを、誰かさんにさせた。お前さんがここに来たのは、ジャレッドや坊主をホントに心配したのかもな」。この人物は、すごく鋭い。そして、麦畑を見て、「こっちへおいで、ジェイミー」と声をかける。隠れて聞いていたジェイミーが立ち上がる(2枚目の写真)。「なんで分かったの?」。その時、遠くからヘリコプターの音が聞こえてくる。叔父は、「鏡だ!」と叫ぶと、鏡の向きを変えるハンドルまで走る。ハンドルは2つあり、1つは叔父が、1つはジェイミーが廻す。鏡の光をシーカーに見つかったら居所がバレてしまうから必死だ。ワンダにも手伝わせる(3枚目の写真)。
  

シーカーに見つからずに済んだ後、叔父は、ジェイミーに、「しばらく見張り役をやってみてはどうだ?」と声をかけ、銃を渡す(1枚目の写真、矢印は銃身)〔弾は抜いてあるが、ジェイミーは知らない〕。「何すれば?」。「彼女を見張ってればいい。できるよな」。ジェイミーは、「こっちだよ」と麦畑から出て行く。ただし、向かった先は、今までいた場所とは違う。「私を独房に連れて行かないの?」。「外が恋しいんだ。あなただって、同じように思ってるんじゃないかって」。そして、目を閉じさせ、手を引いて真っ暗なトンネルを進む。「うんと静かに」。そして、目的地に着き、「ここに座って」と言う(1枚目の写真)。「目を開けていいよ」。2人の目の前に広がる「星空」。「この星は何? こんな星座 見たことない」。「星じゃない。ツチボタルだよ」(3枚目の写真)「空が恋しくなると、ここに来るんだ」。「とっても きれいね」。
  

ジェイミーは、質問をぶつける。「ジェブ叔父さんが言ってるの聞いちゃった。叔父さんは、姉さんがまだ生きてるって思ってる。あなたの中にね。そんなのあり得る? どうなの、ワンダ?」。ワンダは黙っている。「なぜ、答えてくれないの? 姉さん、まだ生きてる?」(1枚目の写真)。弟のこの願いに、メラニーは、「前に言ったことは 忘れて。話してやって」と許可する。「彼女は『必ず戻るから』、って約束したわ」(2枚目の写真)。それを聞いたジェイミーは、ワンダの体の中にメラニーがいることを知り、涙を流す(3枚目の写真)。「メラニーは、今まで約束破ったことある?」。ジェイミーは、「大好きだよ、メル」とワンダに抱きつく。「彼女も、大好きだって。『あなたが無事で幸せだ』 と言ってるわ」。「誰でも こんななの? 中にいるの?」。「いいえ。メラニーだけなの。彼女は特別。とっても強いわ。あなたとの約束を 守ろうとしたの」。「あなたが助けなかったら、約束は守れなかったよ。ありがとう、ワンダ」。「私たちだけの秘密よ」。ジェイミーによるターニングポイントNo.2は、ワンダの中に姉がいることを初めて知って、姉弟の関係に戻ったこと。
  

ワンダがジェイミーの部屋で寝ていると、そこに叔父が入って来て、実った穂を見せ(1枚目の写真、矢印)、「刈入れだ。考えたんだが、お前さんも 食いぶちを稼いだらどうだ。東の畑で会おう」と声をかける。2人が麦畑に現れると、作業していた人々が一斉に見る。中でも、しげしげと見ていたのが、かつて、ワンダを絞め殺そうとした男イアン。イアンは、麦刈りに戻っても、チラチラとワンダを見ている。ワンダ:「なぜ、彼、あなたを見てるの?」。メラニー:「あんたこそ、どうして彼を見てるの?」。マギー伯母が、水の小瓶を配りにきてイアンに渡す。しかし、ワンダには渡さない。イアンは自分が飲んだ後、残りをワンダに差し出す。「忘れないで。彼、あんたを殺そうとしたのよ」。ワンダはメラニーの言葉を無視して瓶を受け取って飲む。「聞いてるの? 殺そうとしたのよ!」。ワンダがイアンに微笑むと、「微笑むのなんかやめて」と抗議する〔メラニーは、ジャレッドが好きなので、こんな行為は不本意〕。その時、また ヘリコプターの音が聞こえてくる。その音で、鎌の扱いを間違えたジェイミーは右脚をひどく切ってしまう(2枚目の写真、矢印は鎌)。今度も鏡を閉じて見つからずに済むが、ジェイミーの傷を見た叔父は、「手当てした方がいい」と告げる(3枚目の写真、矢印はケガをした辺り)。
  

食堂では、叔父がワンダに話を聞いている。「君らがいる惑星の数は?」。「私たちが知ってるのは12。4つには、行ったことがないわ。今も、新しい世界を拡げてる」。男:「12の惑星を奪ったのか?」(1枚目の写真)。「私たちは、そんな風に思ってない。他の生命体とは、触れ合って生きてきたの。仲良く暮らそうと」〔地球でのやり方を見ていると、完全な征服。それにシーカーの態度は軍事制圧そのもの/ワンダの話は彼女の個人見解なのか、地球だけが特例なのか不明〕。「よければ年齢を教えてくれ」。「地球の年で言えば千歳以上。あなた方の太陽で一公転は体験してないけど、地球ほど美しくて難しい場所は他にないって分かったわ」。そこに。物資を調達に行ったジャレッドら2人が入ってくる〔4人が2台のトラックで出かけたが、2人は死亡〕。仲間を失った怒りで、彼は「もうたくさんだ〔This has gone on long enough〕!」と怒鳴り、ワンダにつかみかかろうとする。それを止めたのは叔父だったが、今度は、イアンも、「彼女は脅威じゃない」と援護する。「アーロンとブラントが殺された。シーカーがそいつを捜してたせいだ」〔アーロンたちのトラックが制限速度を超えたのが原因〕。「こんなこと、終わりにしてやる」。その時、ジェイミーが、「ジャレッド、しちゃダメだ!」と止める。「なぜだ?」。「ワンダを殺したら、メラニーも殺しちゃう。まだ、中で生きてるんだ」(2・3枚目の写真)。叔父:「俺は信じる」。ジャレット:「みんな、そいつに騙されてる」。イアンは、安全確保のため、ワンダを自分の部屋に連れて行く。ジェイミーによるターニングポイントNo.3は、ワンダの中に姉がいることを公表したこと。
  

ある日、ワンダが洞内を歩いていると、誰もいない。たまたまジェイミーと会ったので、「みんなはどこ?」と尋ねる。ジェイミーは知っていたが、言うとワンダが傷付くと思い、「知らない」と答える。「なぜ嘘付くの? そんな子じゃないのに」。ジェイミーは、足に包帯を巻いたまま。「足、まだ良くならないの? ドックに診せないと」。「ドックのトコから来たんだ。横になってろって」(1枚目の写真)。「手を洗ってくる。あなたの部屋で会いましょ」。ジェイミーはびっこをひいている。足の傷が化膿して悪化したのだろう〔食堂のシーンでは普通に歩けていた〕。「こんなのおかしいわ。ドックは何を考えてるの? ジェイミーの足を治すより、もっと大事なことって何?」。ワンダはドックの部屋に近づいて行く(2枚目の写真)。彼女がそこで見たものは、床に捨てられた幾つもの寄生体の死骸だった。男たちは、物資の調達に出かけた際、人間を拉致しては連れ戻り、うなじを切って、中にいる寄生体を取り出しては殺していたのだ。それを見てワンダは悲鳴をあげる。そして、人間のことを「怪物」と非難する〔寄生体、特にシーカーこそ怪物そのものなので、どう見ても、この言葉は行きすぎ〕。叔父は、ワンダのところに行き、「君は何を期待してた? 俺たちがあきらめると思ったのか? ここは俺たちの世界だ。俺たちは負け 絶滅に瀕してる。だから、仲間を戻そうとしてるんだ」と、侵略者のくせに非難したことを咎める。「あなたたちのやり方では不可能よ。そんなやり方じゃダメなの。両方とも殺してしまうだけだわ」。それを聞いた叔父は、「もし、俺たちのやり方じゃダメだと言うなら、もう止めさせる」と言う。「たぶん、それが一番だろう。ドックも もう限界だしな」(3枚目の写真)〔今までは全部失敗してきた〕。「信じていいの?」。「お前さんを信じたろ」。
  

叔父は、すぐに話題を切り替える。「他にも問題がある」。それは、ジェイミーのケガだった。ワンダが抗議の断食をしている間に症状が悪化したのだ。ワンダはすぐにジェイミーの元に駆けつける(1枚目の写真、矢印はケガの部分)。ワンダは、「私たち、あなたに良くなって欲しいの」と声をかける。「姉さんみたいだ。そう言えって、言われたの?」(2枚目の写真)。「そうよ」(3枚目の写真)〔メラニーとは3日前から連絡がとれなくなっていたので、これはジェイミーを安心させるための嘘〕
  

ワンダはジャレットの助けを借りてメラニーを呼び戻し〔この時までには、ジャレットもワンダの存在を認めていた〕、一緒に寄生体の特効薬を盗みに行く。病院の前に着くと、ワンダは「私を切って。ジェイミーみたいな傷が要るの」と言う。「そんなことできない」。「すぐ治るから」。ジャレットは、ナイフを取り出すが、手が動かない。「ナイフを取って、自分でやりなさい」。ワンダは、ナイフを取り上げると、左腕を10センチ近く切る(1枚目の写真、矢印、ジャレットは顔を背けている)。そして、血を滴らせながら受付に行き、ヒーラーのところに直行。「どうなさったの?」。「転んだと言って」。「転びました」。「手にナイフを持ってたって」。「手にナイフを持っていたので、自分で切ってしまいました」。これで、ヒーラーも納得する。「治しましょうね」と言い、手近に置いてあった小さな器具を手に取る。その時、洞窟では、ジェイミーの状態はさらに悪化していた(2枚目の写真)。ヒーラーが器具のボタンを押すと霧状のものが噴霧され、傷はたちどころに閉じて見えなくなる。「追い払って」。「できたら、水をいただけます?」。「早く。盗って」。ワンダは、同じ器具が並んでいる棚から5本以上盗んでバッグに入れる(3枚目の写真、矢印はきれいに治った腕、服の血だけ残っている)。病院の出口で、ワンダは寄生体を入れる空のカプセルが置いてあるのを見つけ、愛おしそうに触れる。
  

2人は、フルスピードで洞窟に戻る。ジャレット:「生きてる?」。叔父:「何とか」。ワンダが持ち出したものを見て、「それ何だ?」と訊く。「薬よ」。ドックと伯母は前に立ち塞がり、「待て! ダメだ。それで何する気だ」と近寄らせない。ジャレット:「彼女は、ちゃんとわきまえてる」。ワンダ:「何もしなければ死ぬのよ」。何もできなかった医者に、この言葉に逆らうことはできない。ワンダは器具を持ち、「やって」とドックに言う(1枚目の写真、矢印は器具)。ドックがスプレーすると、醜く開いた傷口は10秒もたたずにふさがり、傷があったことすら分からなくなる。「さあ、ジェイミー、目を開けて」。ジェイミーが目を開ける。ワンダは、嬉しそうに、「ジェイミー」と声をかける(2枚目の写真)。ジェイミーは起き上がると、自分の傷一つない足を見て、「すごいね、ドック」とニッコリする(3枚目の写真)。ジェイミーによるターニングポイントNo.4は、意識してではないが、死にかけたケガで、ワンダを全員が信じ 感謝するようにしたこと。
  

しばらくして、しつこくワンダを追っていたシーカーを叔父が撃つ。ワンダは、彼女を殺さず、洞内に連れて来て治療する。ワンダが「なぜ、放っておいてくれないの?」と訊くと、シーカーは、生意気な口調で、「あんたのような弱い魂が、危険なのよ。他の世界と違い、人間とは共存できない」と冷酷に答える。ワンダが、「あなたが死ねば、危険もなくなる」と言うと、「じゃあ、殺せばいい」。ワンダは、このキチガイ的な魂をどうすべきか考える。そして、ドックと話し合う。「私なら、体から魂〔寄生体〕を取り出せる。もう魂は傷付けないと約束すれば、方法を教えるわ」。ドックは一も二もなく約束する。「もう一つ約束して欲しいの」。ワンダは、誰にも言わないと約束させ、「私を死なせて」と言う。メラニーは、「ダメ! ダメ!」と叫び、ドックは、「できない」と断る。「でも、そうしてくれなければ、教えてあげられない」。そして、次のシーン。ドックの手術台の上には、麻酔を打たれたシーカーが横になっている。ワンダは、反対を押し切り、シーカーを処刑せず、追放することに固執する。「この魂が 次の惑星に着く頃には、あなたの孫も生きてないわ」。そう言うと、病院に行った時盗んできたカプセルを取り出し、体を傷付けずに安全に魂を取り出す方法を実践して見せる。そこにあるのは、優しさと愛。この映画が、他のエイリアン映画と一線を画している大きなポイントだ。魂が出て行った後、シーカーの体は元の人間に戻る〔押し込められていた本来の個性が蘇る〕。そして、シーカーの魂は、専用の装置で遠い惑星に送られる。ワンダは、ジェイミーに、「メラニーが恋しくない? お姉さんに戻って欲しくない?」と訊く。「ここにいるじゃない」。「彼女が望む形じゃないわ。そろそろ去る時だと思うの」。「出て行くの?」(1枚目の写真)。「そうよ」(2枚目の写真)。「でも、いつでも戻って来られるよね?」。返事はない。ワンダは、ツチボタルの洞穴で、叔父、ドック、ジャレット、イアンの4人を前に、人間を元に戻す方法が分かった以上、ここに留まる必要はないので、メラニーの体から出て行くと宣言する(3枚目の写真)。誰からも好かれるようになっていたワンダは、再考を促される。特に、ワンダの個性を愛するようになっていたイアンは、強力に反対する。
  

ドックの手術台に横たわったワンダ。「死にたいの。他の生命体の中で繰り返し千年も生きていれば、あなただって同じ気持ちになるわ」。ドックは何も言えず、席を外す。1人になったワンダに、メラニーは、「ワンダ、私の妹、お願いやめて」と頼む。「ジャレッドやジェイミーと会いたくないの?」。「こんなやり方よくないわ。死んじゃダメ。他の世界に行けるじゃない」。「ありがとう。でも、一番近い惑星に着く頃には、あなたもジェイミーもジャレッドもイアンも、大事な人はずっと前に死んでしまって もういない。そんなの嫌よ。愛してるわ メル」。「愛してるわ」(1枚目の写真)。「幸せにね。たくさんの命を生きて、こんなに幸せになれた。これなら喜んで死ねるわ。さようなら」。「さようなら」。ワンダは目を閉じ、一筋の涙が流れる。そして暗転。光が見え、最初に見えたのはジェイミーの顔。「ワンダ、聞こえる?」(2枚目の写真)。「ここはどこ? 私は誰?」。満面の笑顔のメラニーが、「ようこそ、ワンダ」と言い、鏡を出して顔を見せる(3枚目の写真)。
  

ワンダは、「約束を破ったのね」と医師を責める。「みんなが破らせたんだ。あなたに生きてて欲しかったから」(1枚目の写真)。「話したでしょ。他の命を奪いたくないって」。叔父は、「この1ヶ月、人間から魂を取り出してきたが、その体は、魂を出しても目覚めなかったんだ」と説明する。ドック:「体は死にかけていた。彼女を救う唯一の方法は、あなたを中に入れることだった」。メラニー:「あなたは殺したんじゃない。命を与えたのよ」(2枚目の写真)。ジェイミーが、最後に、「何、考えてるの、ワンダ?」と尋ねる(3枚目の写真)。ワンダは、「何て幸せなんだろうって」と答える。
  

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